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大阪地方裁判所 平成7年(ワ)4778号・平7年(ワ)13378号・平8年(ワ)5279号・平7年(ワ)12983号 判決

平成七年(ワ)第四七七八号 損害賠償等請求事件(甲事件本訴)

平成七年(ワ)第一三三七八号 反訴請求事件(甲事件反訴)

平成七年(ワ)第一二九八三号 損害賠償等請求事件(乙事件本訴)

平成八年(ワ)第五二七九号 反訴請求事件(乙事件反訴)

甲・乙事件本訴原告兼甲事件反訴被告 辻和建設株式会社

右代表者代表取締役 辻 一義

乙事件本訴原告兼乙事件反訴被告 草野禮治

甲事件反訴被告 丸高繊維株式会社

右代表者代表取締役 高橋宏爾

甲事件反訴被告 高橋宏爾

同 辻一義

乙事件反訴被告 株式会社草野工務店

右代表者代表取締役 草野禮治

右甲・乙事件本訴原告ら及び甲・乙事件反訴被告ら 訴訟代理人弁護士 高階貞男<外三名>

右高階貞男訴訟復代理人弁護士 岡部創史

甲・乙事件本訴被告兼甲・乙事件反訴原告 オリックス株式会社

右代表者代表取締役 宮内義彦

右訴訟代理人弁護士 佐伯照道<外八名>

乙事件本訴被告 株式会社大阪銀行

右代表者代表取締役 松葉敏

右訴訟代理人弁護士 中務嗣治郎<外一〇名>

主文

一  甲事件反訴被告丸高繊維株式会社及び同高橋宏爾は、甲事件反訴原告(甲・乙事件本訴被告・乙事件反訴原告)オリックス株式会社に対し、各自二億三五四〇万八二七四円並びに内金九九九三万九二七六円に対する平成五年九月二〇日から支払済みまで年一四・六パーセントの割合による金員及び内金一億三五四六万八九七一円に対する同九年三月一日から支払済みまで年六パーセントの割合による金員を支払え。

二  甲事件反訴被告(甲・乙事件本訴原告)辻和建設株式会社及び甲事件反訴被告辻一義は、甲事件反訴原告(甲・乙事件本訴被告・乙事件反訴原告)オリックス株式会社に対し、各自二億三五四〇万八二七四円並びに内金九九九三万九二七六円に対する平成五年八月二日から支払済みまで年一四・六パーセントの割合による金員及び内金一億三五四六万八九七一円に対する同九年三月一日から支払済みまで年六パーセントの割合による金員を支払え。

三  乙事件反訴被告(乙事件本訴原告)草野禮治及び乙事件反訴被告株式会社草野工務店は、乙事件反訴原告(甲・乙事件本訴被告・甲事件反訴原告)オリックス株式会社に対し、各自二億三五四〇万八二七四円並びに内金九九九三万九二七六円に対する平成五年八月七日から支払済みまで年一四・六パーセントの割合による金員及び内金一億三五四六万八九七一円に対する同九年三月一日から支払済みまで年六パーセントの割合による金員を支払え。

四  甲・乙事件本訴原告(甲事件反訴被告)辻和建設株式会社及び乙事件本訴原告(乙事件反訴被告)草野禮治の請求をいずれも棄却する。

五  訴訟費用のうち、乙事件本訴被告株式会社大阪銀行に生じた費用は乙事件本訴原告(甲事件本訴原告・甲事件反訴被告)辻和建設株式会社の負担とし、その余の費用は、甲・乙事件本訴原告兼甲事件反訴被告辻和建設株式会社、甲事件反訴被告辻一義、乙事件反訴被告株式会社草野工務店、乙事件本訴原告兼乙事件反訴被告草野禮治、甲事件反訴被告丸高繊維株式会社及び同高橋宏爾の負担とする。

六  この判決は、第一ないし三項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

〔当事者等の呼称〕

以下、次のとおり略称する。

甲・乙事件本訴原告兼甲事件反訴被告辻和建設株式会社~原告辻和建設

乙事件本訴原告兼乙事件反訴被告草野禮治~原告草野

甲事件反訴被告丸高繊維株式会社~反訴被告丸高繊維

甲事件反訴被告高橋宏爾~反訴被告高橋

甲事件反訴被告辻一義~反訴被告辻

乙事件反訴被告株式会社草野工務店~反訴被告草野工務店

甲・乙事件本訴被告兼甲・乙事件反訴原告オリックス株式会社~被告オリックス

乙事件本訴被告株式会社大阪銀行~被告大阪銀行

オリックスUSAコーポレーション~オリックスUSA

井上雅彦~井上

池田誠~池田支店長

ニューヨーク市内のウォールストリートとブロードウエイの交差点の北東角に所在する、敷地面積八六一五平方フィート、地上二二階、地下四階建の建物及びその敷地~本件オフィスビル

なお、原告辻和建設、同草野、反訴被告丸高繊維、同高橋、同辻及び同草野工務店を合わせて「原告ら」と、被告オリックス及び被告大阪銀行を合わせて「被告ら」と略称することがある。

第一請求

(甲事件本訴)

被告オリックスは、原告辻和建設に対し、金一億四二二〇万〇一六二円及びこれに対する平成七年六月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(甲事件反訴)

主文第一、二項と同じ。

(乙事件本訴)

一 被告オリックスは、原告草野に対し、全一億四八〇三万三四二八円及びこれに対する平成八年一月一八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二 被告大阪銀行は、原告辻和建設に対し、金一億四二二〇万〇一六二円及びこれに対する平成八年一月二六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(乙事件反訴)

主文第三項と同じ。

第二事案の概要

本件各本訴事件は、被告オリックスが企画・販売した米国における不動産小口化投資商品(賃貸収益を投資者に配分すること等を目的として、不動産を購入するもの)に投資した原告らが、被告オリックスの担当社員において右投資勧誘の際海外不動産投資の危険性(リスク)や問題点を何ら説明することなく、有利かつ安全な節税商品であるかのように強調して販売した結果、原告らをして損害を被らせるに至ったとして、右企画・販売をした被告オリックス及び右企画を原告らに紹介した被告大阪銀行に対し、説明義務違反等を理由として共同不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償を請求している事案であり、また、本件各反訴事件は、原告らに対し、右投資の出資金の一部として貸し付けた金員の返還及び原告らが被告オリックスとの間で締結した債務承認契約に基づき約定の金員の支払を求めている事案である。

一  前提事実(証拠を掲記した以外の事実については当事者間に争いがないか、弁論の全趣旨により容易に認めることができる。)

1 当事者

(一) 原告辻和建設は、建築請負を業とする資本金一二〇〇万円の株式会社であり、反訴被告辻はその代表取締役である。

平成元年当時、同社は被告大阪銀行服部支店を主力銀行としており、同人は右支店の取引先の親睦団体である「服部大銀会」の会長を務めていた。

(二) 反訴被告草野工務店は、建売住宅等の建築・販売のほか、テナントビルの賃貸を業とする株式会社である。原告草野はその代表取締役であり、個人としてもマンション賃貸業を行っていた。

平成元年当時、同社らと被告大阪銀行との間に取引関係はなかった。

(原告草野本人)

(三) 反訴被告丸高繊維は、衣料の製造販売等を業とする資本金二〇〇〇万円の株式会社であり、同高橋はその代表取締役である。

平成元年当時、同社は被告大阪銀行服部支店を主力銀行としており、同人は服部大銀会の副会長を務めていた。

(四) 被告オリックスは、各種動産のリース、不動産売買、金銭の貸付、商品投資販売等を業とする株式会社であり、井上は同社の社員であった。

(五) 池田支店長は、平成元年当時、被告大阪銀行服部支店支店長であった。

2 被告オリックスの企画・販売に係る不動産小口化投資商品の概要

被告オリックスは、次の内容の海外不動産小口化投資商品(以下、右商品を「本件投資商品」といい、また、本件投資商品に係る投資ないし出資を「本件投資」という。)を企画、開発した。

(一) リミテッドパートナーシップ(有限責任組合)の設立

被告オリックスは、日本人投資家の参加・出資を募るとともに自らも参加・出資して、アメリカコネチカット州にツー・ウォールストリート・アソシエイツ・リミテッドパートナーシップ(以下「本件パートナーシップ」という。)を設立する。

(二) 投資額(割合)

日本の投資家の募集・勧誘は一口二五〇万ドル(持分比率二四七九分の一〇〇)単位で行われた。

なお、被告オリックスは、持分二四七九分の一五四相当の出資をし、ジェネラル・パートナー(無限責任社員・業務執行組合員)は募集総額の一パーセントを出資する。

(甲一七、乙一、二)

(三) 出資方法

日本の投資家は、右二五〇万ドルのうち、一三二万二一〇六ドルを現実に出資するが、そのうち七四万九七三二ドルは被告オリックスからの借入金(以下「オリックスローン」という。)により、残りの五七万二三七四ドルは自己資金により投資するものとされている。

(甲一七、乙一、二)

(四) 本件パートナーシップによる借入れ

本件パートナーシップは、投資家からの現実の投資(当初募集資金総額は三二七七万五〇〇〇ドル)を受け入れるほか、オリックスUSAから二九〇〇万ドル(以下「組合ローン」という。)の融資を受ける。

(五) 本件パートナーシップによる建物購入

本件パートナーシップは、右(三)及び(四)の資金を基にニューヨーク市にある本件オフィスビルを購入する。

(六) 本件パートナーシップによる管理・運営等

(1) 本件パートナーシップの運営及び本件オフィスビルの管理運営は被告オリックスの子会社であるオリックスUSAの子会社であるデラウエア州法人のOLGPツー・ウォール・コープとニューヨークのパートナーシップであるウォール・アンド・ブロードウエイ・アソシエイツがジェネラル・パートナーとしてこれを行う。

(なお、ジェネラル・パートナーは当初右二社で構成されていたが、平成二年一月一七日に投資持分の譲渡が行われ、被告オリックスの系列下にあるOLGPツー・ウォール・コープが単独のジェネラル・パートナーとなっている。)

(2) ジェネラル・パートナーは、本件オフィスビルの管理監督料、本件パートナーシップの管理料、本件オフィスビルに対する融資、売却等の際の手数料の支払を受けるほか、別途、費用の支払を受ける。

また、ジェネラル・パートナーは、リミテッド・パートナー全員の出資金の過半数を超えるリミテッド・パートナーの同意を得て、<1>物件のすべて又は実質的にすべてに対して抵当権又は担保権等を設定して債務を負担し、<2>本件パートナーシップの費用を支払うために、ジェネラル・パートナー及びリミテッド・パートナーが本件パートナーシップに供与した貸付金に対する借入れ又は借換え以外に、物件のすべて又は実質的にすべてに対して抵当権又は担保権を設定して借入れ又は借換えをし、<3>物件のすべて又は実質的にすべての売却又は譲渡をすることができる。(甲八の1、2)

(3) リミテッド・パートナーになった日本の投資家は、本件パートナーシップにつき、毎期の損益を負担あるいは享受するが、その経営・運営に関与することはできず、途中脱退、投資金の減少もなし得ない(ただし、ジェネラル・パートナーの承認があれば持分権の譲渡は可能である。)。

(七) 本件建物は一定期間賃貸された後、売却され、清算される。

3 本件投資

原告辻和建設、同草野及び反訴被告丸高繊維は、平成元年四月下旬、本件投資の出資金として、それぞれ自己資金七六二九万七四五三円及びオリックスローンによる借入金九九九三万九二七六円を本件パートナーシップに出資した。

(甲一の1、2、二、三・四の各1、2、六、乙八の1、2、一〇の1、2)

4 被告オリックスとの間の消費貸借契約締結

(一) 原告辻和建設、同草野及び反訴被告丸高繊維は、平成元年四月二五日、本件パートナーシップへの出資金の一部に充てるため、前記2(三)のオリックスローンの実行として、被告オリックスから、それぞれ、九九九三万九二七六円を弁済期限平成一一年四月三〇日、利率は貸付日以降三年間を年六・五パーセント、四年目以降四年間を年七・〇パーセント、八年目以降三年間を年七・五パーセントとし(ただし、借入日から第一回弁済日までの弁済金の計算方法に限っては日割計算、その後は月利計算)、利息は第一回を平成元年八月三一日に、その後第一回の三か月後以降三か月毎の各末日限り(第二回は同年一一月三〇日、最終第四〇回は平成一一年四月三〇日)、別紙1の弁済明細書記載のとおり後払いで支払うこととし、遅延損害金は年一四・六パーセント、弁済金の支払を一回でも遅滞したときは当然に期限の利益を失い直ちに残債務額を弁済する旨の約定で借り受けた(以下「本件各消費貸借契約」という。)。

(二) 本件各消費貸借契約締結の際、反訴被告辻は原告辻和建設のため、反訴被告草野工務店は原告草野のため、反訴被告高橋は同丸高繊維のため、それぞれ、原告辻和建設、同草野又は反訴被告丸高繊維が本件各金銭消費貸借に基づき被告オリックスに対し負担する一切の債務を連帯保証した。

5 被告大阪銀行との消費貸借契約締結

平成元年四月二五日、原告辻和建設は一億円を、同草野は一億五〇〇〇万円を、反訴被告丸高繊維は一億円を、被告大阪銀行から借受け、それぞれ、そのうち七四四〇万九〇〇〇円を前記2(三)の自己資金として出資した。

6 債務承認契約書への調印

(一) 原告辻和建設、同草野及び反訴被告丸高繊維は、平成元年四月二八日、それぞれ、被告オリックスとの間で、本件投資に関し、以下の内容の債務承認契約書(以下、右契約を「本件債務承認契約」という。)に記名押印した。

「 弊社は、本件パートナーシップの投資持分二四七九分の一〇〇を有するリミテッド・パートナーであり、本件パートナーシップに生じた損益の出資持分割合に相当する部分は、最終的に弊社に配分される関係にあります。

また、弊社は、オリックスUSAが貴社の子会社であり、オリックスUSAに生じた損益は、最終的には貴社に帰属する関係にあることも承知しています。

そこで弊社は、オリックスUSAが本件パートナーシップとの間の金銭消費貸借取引上損害を受けたことにより貴社が蒙ることあるべき損害を担保する趣旨で、以下のとおり貴社に対し債務を負担することを承認します。

1 弊社は、貴社に対し、下記のターム・ノートに基づき本件パートナーシップがオリックス・USAに対し負担する下記の円債務と同額、同内容の円債務を負担することを承認します。ただし、その負担承認額は、上記円債務額の二四七九分の一〇〇(弊社の本件パートナーシップに対する出資持分割合に相当する額)を限度とします。

オリックス・USA及び本件パートナーシップ間の一九八九年五月二日付ターム・ノートに基づき本件パートナーシップがオリックス・USAに対し負担する二九二〇万ドルに相当する円債務金三八億三七九八万八〇〇〇円

2 弊社は、貴社に対し、本件パートナーシップがオリックスUSAに対する前記1のターム・ノート上の債務につき、債務不履行をしたとき、または、期限の利益を喪失したときは、貴社からの支払請求に応じて、その支払日において本件パートナーシップがオリックスUSAに対し負担する円債務の二四七九分の一〇〇に相当する額を支払うものとします。

3 本件パートナーシップがオリックスUSAに対し債務不履行した債務を弁済等により消滅させたときは、弊社の前記1に基づく弊社の貴社に対する債務もその消滅額の二四七九分の一〇〇相当額を限度として消滅するものとします。

4 本証の準拠法は日本法とします。」

(二) 反訴被告高橋、同辻、同草野工務店は、それぞれ、右債務承認契約書に反訴被告丸高繊維、原告辻和建設及び同草野の連帯保証人として署名押印又は記名押印した。

7 収益金の分配状況

本件パートナーシップは、平成三年二月二七日に原告らに対して収益金の分配をしたのを最後に、以後、右分配をしていない。

8 本件オフィスビルの評価額

平成元年三月一日時点における本件オフィスビル(建物部分)の投資評価額は六〇〇〇万ドルであったが、平成五年一月一八日時点における市場価額は一三五〇万ドルと評価された。

(乙四、五)

9 本件パートナーシップによる追加借入

本件パートナーシップは、平成八年三月までに、オリックスUSAから六六〇万ドルの追加借入れをなし、その後も追加借り入れをした結果、追加借入れ残高は本件オフィスビルの売却時において六九八万五六七五・六三ドルであった。

10 期限の利益喪失、期限後弁済

(一)(1) 原告草野は、本件各消費貸借契約に基づく平成四年一一月三〇日(第一四回)弁済期日分の利息を支払わず、同日の経過により、期限の利益を失った。

(2) 原告辻和建設及び反訴被告丸高繊維は、本件各消費貸借契約に基づく平成五年二月二八日(第一五回)弁済期日分の利息の一部三七万四七七二円を支払わず、同日の経過により、期限の利益を失った。

(二)(1) 被告オリックスは、平成四年一一月三〇日の経過後、原告草野から合計一一六八万〇三九九円の支払を受けたので、これを同日弁済期日分の経過利息一七四万八九三七円及び期限の利益喪失後の遅延損害金の一部にそれぞれ充当した。

(2) 被告オリックスは、平成五年二月二八日の経過後、原告辻和建設から合計六一一万九一一三円の、反訴被告丸高繊維から合計八一〇万三七五五円の支払を受けたので、これらを同日弁済期日分の利息の一部三七万四七七二円及び期限の利益喪失後の遅延損害金の一部にそれぞれ充当した。

11 本件オフィスビルの売却、損失の発生、本件債務承認契約に基づく請求

(一) 本件パートナーシップは、平成八年八月二八日(但し、ニューヨーク時間)、フィールドストーン・キャピタル社に、本件オフィスビルを、一三七〇万五三八八・八二ドル(一ドル=一〇八・七三円で換算すると、一四億九〇一八万六九二六円)で売却した。

(乙一三の1、2、一四、一五、一七ないし一九)

(二) 本件パートナーシップは、本件オフィスビルの売却代金をオリックスUSAへの債務の返済に充てたが、なお三三億五八二七万五七九〇円の未返済額が生じた。

(乙一五、一九、二〇)

(三) 被告オリックスは、同年一二月二〇日、原告辻和建設、同草野及び反訴被告丸高繊維それぞれに対し、本件債務承認契約に基づき、別紙2の計算結果に基づき、右残債務額三三億五八二七万五七九〇円の二四七九分の一〇〇に当たる一億三五四六万八九七一円を同九年二月二八日限り、支払うよう請求した。

二  主たる争点

1 甲・乙事件本訴における争点

(一) 本件投資の勧誘に際し、被告オリックスの担当社員に説明義務違反があったか否か。

(二) 被告オリックスの担当社員による本件投資の勧誘は社会的相当性を逸脱する違法な行為といえるか否か。

(三) 被告大阪銀行ないし同支店長(池田支店長)に本件投資について説明義務違反ないし助言義務違反があったか否か。

2 甲・乙事件反訴における争点

(一) 本件債務承認契約、本件各消費貸借契約及び右各契約に関する連帯保証契約は錯誤により無効か否か。

(二) 右各契約は公序良俗違反により無効か否か。

(三) 右(一)の各契約に基づき請求することは信義則に違反するか否か。

三  主たる争点に関する当事者の主張

(原告らの主張)

1 本件投資に内在する問題点

本件投資には不動産投資固有のリスクのほか、左記<1>ないし<9>のような問題点があった。

<1> 公正な市場の欠如

本件投資のような不動産投資には公正な市場が欠如しており、その結果、一般人は、価格形成の過程を容易に認識することができない上、価格は不安定であって流通性が極めて低いため投下資本の回収も容易ではない。

<2> 事業の一任性

本件投資に参加した投資家は、多額の投資と債務負担を負わされるにもかかわらず、何ら経営・運営に参加、関与し得ない立場に置かれ、その持分の譲渡も事実上不可能であるため、事業者にすべてを一任したまま長期間にわたって拘束を受けることになる。

<3> 投資対象が米国の不動産であること

本件投資の対象は、不動産時価の評価方法及び賃貸借契約についての諸条件や慣習も異なる米国の不動産であり、一般投資家には、その投資リスクの程度と質とを実感を持って十分に理解することが困難である。

<4> 貸付けによる資金負担

一般投資家への勧誘は、余裕資金の範囲内において行われなければならず、専門業者が自ら貸付けを行い利息収入を得ることを前提に勧誘するなどということは到底許容されるものではないところ、本件投資は、被告オリックス自身による貸付け及び本件投資の勧誘に協力した被告大阪銀行による貸付けが前提となっていた。

なお、本件投資の勧誘後である平成六年六月に成立した不動産特定共同事業法第二二条は、事業者が勧誘に際してその相手方に金銭もしくは有価証券を貸し付け、または貸付けの媒介・取次ぎ・代理をなすことを禁じている。

<5> リスクの範囲

本件投資は、本件パートナーシップのオリックスUSAに対する債務の承認という形式を通じて、勧誘者である被告オリックス側のリスク一切を投資者に転嫁させるものである。

<6> 利益構造

本件投資のシステムは、被告オリックスが企画立案した事業計画、投資システム、同社の関連会社及び同社の選択に係る米国の法人を信頼してこれらにすべてを一任するほかなかった投資家らに無限責任にも近いリスクを負担せしめる一方、被告ら事業者側に、利息収入や各段階での手数料等の割高かつ確実な利益をもたらす構造を有していた。

<7> 取引構造の難解さと周知性の欠如

本件投資は、日本の一般投資家にとって馴染みのないリミテッドパートナーシップ形式を採る等その仕組みが専門的知識・経験を持たない者には容易に理解し得るものではない上、その勧誘がなされた当時にはまったく周知性がなく、被告らからの勧誘・説明以外に投資の適否を判断する資料を得ることができない状況であった。

<8> 本件投資企画の合理性の欠如

本件投資は、IRI社作成の、米国の賃貸事情を考慮しない不合理な内容の一通りの収益シュミュレーションを前提に企画立案されたものであり、本件オフィスビルも適正な市場価額の調査や収支予測の検討も経ず、不当な高値で購入されたものである。

<9> 法規制の不存在

本件投資は、その勧誘当時、何らの法的規制もなく、野放しの状況であった。

2 本件投資の勧誘に関する被告オリックスの責任(争点1(一)(二))

(一) 専門業者である被告オリックスが、一般投資家である原告らに対し、周知性がなく、原告らが基礎知識を持たない本件投資への参入を勧誘するに当たっては、原告らに自己責任による取引を可能とするだけの情報の提供すなわち本件投資の仕組み及びリスクの実態と範囲を十分に説明し、理解させるべき注意義務があった。

(二) にもかかわらず、被告オリックスの担当者は、大企業である同社への絶大な信頼及び原告らの取引銀行の支店長に対する信頼を背景に、節税商品であることのみを前面に打ち出し、一通りの収益シュミュレーション表に基づき、投資リスクは為替リスクのみであるかのような不正確で誤った説明、断定的判断を伴った説明、勧誘を行い、原告らをして、本件投資には、為替リスク以外にはリスクがなく、右シュミュレーション表に従った年一三・五パーセント前後の利回りが得られるものと誤信せしめ、本件投資への参入を承諾させたものである。

(三) そして、前記1のような問題点のある本件投資につき、被告オリックスの担当者が前項のような勧誘をなすことは、説明義務違反による勧誘行為として不法行為を構成し、その使用者である被告オリックスは使用者責任を負う。

また、そもそも一般投資家である原告らに対し、前記1のような問題点のある本件投資への参入を勧誘すること自体、社会的相当性を逸脱した勧誘行為として不法行為を構成し、その使用者である被告オリックスは使用者責任を負う。

3 本件投資の勧誘に関する被告大阪銀行の責任(争点1(三))

(一) 被告大阪銀行ないし池田支店長には、左記(1) ないし(3) の事情の下、自ら本件投資を紹介し、被告オリックスの担当者とともに原告らに本件投資の勧誘を行う以上、本件投資の内容を正確に理解した上で右担当者とともに原告らに十分な説明を行い、少なくとも右担当者の不十分な説明により原告らが十分な理解に達していないことが認められるときには、自ら補足説明をするか、又は、右担当者に再度の十分な説明を促す等、原告らが本件投資のリスクにつき正確な理解を得られるように的確な助言を行うべき注意義務があった。

(1)  被告大阪銀行は、本件投資の勧誘当時、原告辻和建設及び反訴被告丸高繊維の主力取引銀行であり、池田支店長は、その取引店の支店長であった。

(2)  右当時、銀行の社会的地位及び専門家としての知識、能力に対する顧客からの信頼は民間企業としては最上位に位置し、主力銀行からの勧誘や助言を顧客が疑うということはあり得ないことであった。

(3)  原告らに対する本件投資の勧誘は、被告大阪銀行からの借入れによる資金調達及び被告大阪銀行に口座を設定して事業開始後の外貨建での入出金一切を行うことが前提であった。

(二) にもかかわらず、池田支店長は、前記2(二)のような被告オリックスの担当者の不十分な説明に対し、補足説明を行うことも右担当者に再度の説明を促すこともせず、却って自らも相づちを打ち、節税効果がある有利な事業であることを強調して積極的に事業への参入を勧めた。

(三) かかる被告大阪銀行ないし池田支店長の行為は説明義務違反ないし助言義務違反として不法行為を構成し、被告オリックスとの共同不法行為を構成する。

4 本件債務承認契約、本件各消費貸借契約及び右両契約に関する連帯保証契約の効力

(一) 錯誤無効(争点2(一))

(1)  本件投資に参加するか否かを判断するに当たり、本件投資の性質、特に損益の実態と範囲が最も重要な判断要素となるところ、原告らは、前記2(二)のような被告オリックスの担当者の説明・勧誘の結果、本件投資につき為替リスク以外のリスクの実態や範囲を一切認識することができず、本件投資が節税目的の安全かつ有利な取引であるとの錯誤に陥り、その結果、本件債務承認契約、本件各消費貸借契約及び右両契約に関する連帯保証契約を締結したものであり、右各契約は、要素の錯誤に基づくものとして無効である。

原告らは本件債務承認契約による債務負担をなさしめられること自体を全く説明されておらず、契約書は多数の書類に紛れて手続上必要なものとしてその意味を理解できないまま捺印せしめられたものである。

(2)  また、仮に右錯誤が動機の錯誤であるとしても、本件における勧誘の経緯に照らせば、原告らの動機は被告オリックスの担当者に表示されていたものである。

(二) 公序良俗違反による無効(争点2(二))

被告らは、被告大阪銀行への顧客の絶大な信頼を背景に、前記1のような問題点を有する本件投資を、一般投資家である原告らに対し、前記2(二)、3(二)のような態様で勧誘し、本件投資への参入を決意させ、本件債務承認契約、本件各消費貸借契約及び右両契約に関する連帯保証契約を締結させたものであり、右各契約の締結は取引公序に反するものであって無効である。

5 信義則違反(争点2(三))

前記2のとおり被告オリックスの担当者の本件投資への勧誘行為は不法行為に該当し、本件債務承認契約、本件各消費貸借契約及び右両契約に関する連帯保証契約はいずれも本件投資への参加の際に一連一体の契約として締結されたものであり、本件各消費貸借契約によって被告オリックスから貸し付けられた金員もすべて本件投資に出資されているということに鑑みれば、被告オリックスが右各契約に基づく請求をなすことは信義則に反するものとして許されない。

(被告オリックスの主張)

1 本件投資の勧誘に関する被告オリックスの責任(争点1(一)(二))

(一) 原告らは、あたかも被告らが原告らを被告オリックスの運営する事業に参加させたかのように主張するが、本件投資は事業主体たるパートナーシップの事業遂行能力に対する投資を目的とするいわゆるベンチャーキャピタルではなく、投資家らでリミテッドパートナーシップを組んで米国の不動産を共同購入し、運営するという不動産投資である。すなわち、投資者は一口二五〇万ドルを出資してテナントの入った米国の不動産に投資し、減価償却を取り込み、一定の賃料収入を期待し、不動産価額の将来の値上がりを見込み、売却によるキャピタルゲインをも期待するというものである。

リミテッドパートナーシップを組むのはそれが不動産に対する投資の手段として投資家にとって最も節税効果のある形態だからであり、ジェネラル・パートナーの設置は米国におけるパートナーシップ法上必要な機関として法定されているからにすぎず、その経済的基盤は何ら原告ら投資家の負担に影響を与えないものである。

(二) 被告オリックスは、本件投資が不動産投資であることを理解している原告らに対し、基本的な内容を口頭で説明した上、詳細なパンフレットを十分な余裕を持って交付し、いつでも質問に応じる体制を取っており、説明義務違反はない。

(三) 本件投資の本質は右(一)のとおりであり、本件投資の勧誘は何ら取引公序に反するものではない。本件投資によって原告らが損害を被ったのは被告オリックスが構築した節税商品に問題があったからではなく、不動産市況の低迷により賃料収入及び売却代金が目論見どおりにいかなかったからにすぎず、不動産投資である本件投資の基本的属性に内在するリスク要因が現実化したにすぎない。

(四) 被告オリックスは、投資家が本件投資の出資金の自己資金部分をいずれから調達するかにつき一切関与しておらず、被告大阪銀行からの借入れを前提として勧誘したことはない。

(五) 本件債務承認契約の性質について付言しておくに、同契約は、不動産投資である本件投資において、投資者が不動産購入資金として本来的に負担すべき債務を、税務対策上本件パートナーシップが借り入れることにし、これを投資者が日本国内で債務承認するという形で実質的に保証するものに過ぎず、被告オリックスらの事業主体としてのリスクを原告らに転化したものではない。

2 本件債務承認契約、本件各消費貸借契約及び右両契約に関する連帯保証契約の効力

(一) 錯誤無効の有無(争点2(一))

原告らは、本件投資が不動産投資であることを認識しており、ただ、賃料収入及びキャピタルゲインの取得において見込み違いが生じたにすぎず、法律上の錯誤はない。

(二) 公序良俗違反の有無(争点2(二))

将来の予測が事後的に誤りであると判明したからといって本件投資への参加を勧誘し、その際に本件債務承認契約、本件各消費貸借契約及び右両契約に関する連帯保証契約を締結することが公序良俗に反するものではない。

3 本件債務承認契約、本件各消費貸借契約及び右両契約に関する連帯保証契約に基づく請求と信義則違反(争点2(三))

原告らの主張は争う。

(被告大阪銀行の主張)

本件投資の自己資金部分を被告大阪銀行からの借入れによって拠出することは本件投資の前提とはなっていない上、池田支店長は、被告オリックスの担当者である井上を原告辻和建設に紹介しただけで、積極的な勧誘行為は行っておらず、また、そもそも本件投資の特質及びリスクについては井上から十分な説明がなされており、被告大阪銀行に説明義務違反ないし助言義務違反はない。

四  原告辻和建設及び同草野の損害に関する主張

(原告辻和建設の主張)

原告辻和建設は、被告らの不法行為により、左記(一)ないし(九)の損害合計額から同社が本件投資に関し受領した分配金一〇六九万一八五六円を控除した合計一億四二二〇万〇一六二円の損害を被った。

(一) リミテッドパートナーシップ契約及びエクスロー契約に基づき投資した自己資金 七六二九万七四五三円

(二) 右自己資金調達のためになした大阪銀行からの借入れ(一億円)に要した収入印紙代のうち右自己資金相当部分 一万五二五九円

(三) 右借入金に対して支払った利息のうち右(一)の自己資金相当部分(但し、平成七年一月分まで) 二九二六万三〇三八円

(四) オリックスローンに対して支払った利息(平成六年七月まで) 三一一一万一七九五円

(五) 本件投資に関する契約手数料(含消費税) 一五六万円

(六) 本件投資に参加した結果、米国で支払を余儀なくされた税金 一六八万四四七三円

(七) 右税金支払のため被告オリックスに紹介されたアーサーアンダーセンアンドカンパニー宇野紘一税理士事務所に支払った報酬 九三万円

(八) 右(六)の税金支払のため被告オリックスに紹介された小笠原事務所に支払った報酬 六三万円

(九) 弁護士費用 一一四〇万円

(原告草野の主張)

原告草野は、本件被告オリックスの不法行為により、左記(一)ないし(九)の損害合計額から同人が本件投資に関し受領した分配金一〇六九万一八五六円を控除した合計一億四八〇三万三四二八円の損害を被った。

(一) リミテッドパートナーシップ契約及びエクスロー契約に基づき投資した金員 七六三〇万二四五三円

(二) 右金員の調達のためになした大阪銀行からの借入れ(一億五〇〇〇万円)に要した収入印紙代のうち右金員相当部分 五万〇八六八円

(三) 右借入金に対して支払った利息のうち右(一)の金員相当部分(但し、平成七年一一月分まで) 二八七〇万八六三四円

(四) 右(二)の借入金につき返済した元金のうち右(一)の金員相当部分 五五九万五五一三円

(五) オリックスローンに対して支払った利息(平成七年二月分まで) 三三五四万七八一六円

(六) 本件投資に関する契約手数料(含消費税) 一五六万円

(七) 本件投資に関する米国での税金支払のため被告オリックスに紹介されたアーサーアンダーセンアンドカンパニー宇野紘一税理士事務所に支払った報酬 九三万円

(八) 右税金支払のため被告オリックスに紹介された小笠原事務所に支払った報酬 六三万円

(九) 弁護士費用 一一四〇万円

第三争点に対する判断

一  本件投資商品及び対米不動産投資の特質

1 本件投資商品の特質

投資者に不利益を与えるおそれという観点から、本件投資商品の内容を検討してみるならば、為替の変動や不動産市況の低迷により賃料収入が減少し、収益の分配が受けられなくなったり、組合ローンの返済が困難となり本件債務承認契約に基づく支払を余儀なくされたり、処分時に損失を生ずるおそれがあるほか、投資者は本件パートナーシップの経営・運営に関与できないとか、途中脱退や持分譲渡が原則としてできないという点が挙げられる。

2 対米不動産投資の特質

対米投資に関するある書籍(甲一五)によれば、次のような指摘がなされている。

<1>空室率(vacancy rate)の変動や、予期しない修理費用の発生等の変動要因(variables )があるので、投資する時点で、収益を正確に予測することができない。

<2>右変動要因のほかに、全米及び各地域の経済情勢がレント収入に大きく影響するので、リスクの度合を簡単に評価することができない。

<3>投資家又は不動産管理会社が、不動産投資を積極的に管理し、テナントの勧誘、レントの回収及び物件の維持、補修を行わなければならない。

<4>不動産には流動性(liquidity )がないので、売りたくてもすぐに換金するのが困難である。

二  原告らの投資経験等

証拠(乙七、証人井上雅彦、同池田誠、原告辻和建設代表者、反訴被告丸高繊維代表者、原告草野)によれば、次の事実が認められる。

1 反訴被告高橋

反訴被告高橋は、本件投資の勧誘を受けた当時、不動産投資、節税についての知識を相当程度有していた。また、株の現物取引を行い、ゴルフ会員権を購入したこともある。

2 反訴被告辻

反訴被告辻は、本件投資の勧誘を受けた当時、株式や不動産投資の経験はなかった。

3 原告草野

原告草野は、本件投資の勧誘を受けた当時、米国の不動産取引の実情についてある程度知識を有し、ゴルフ場開発に積極的に関心を示し、株式投資の経験もあった。

三  本件投資に至る経緯

1 井上による本件投資の勧誘の開始

井上は、平成元年一月ころ、被告オリックス国際営業第三部海外不動産グループによる本件投資に関する説明会に出席し、知識を得た上、その勧誘を開始した。

なお、井上は、前年の秋に米国のブロードウェーの物件を対象とした本件投資と同種の商品の販売を行ったことがあった。

(証人井上雅彦)

2 池田支店長に対する顧客紹介依頼等

(一) 井上は、被告オリックスの他の顧客から紹介された池田支店長に対し、安定的に収益を上げ、節税に関心があり、不動産投資に興味のある法人又は個人の紹介を依頼し、池田に対し、後記3(一)の原告らに対する説明とほぼ同内容の説明を行った。

(二) 池田支店長は、右説明を聞いて節税商品として適当ではないかと考え、原告らを含め五社を井上に紹介した。

((一)、(二)につき、乙七、丙一、証人井上雅彦、同池田誠)

3 原告らに対する本件投資の勧誘、説明内容

井上は、後記(二)ないし(四)のとおり池田支店長とともに反訴被告丸高繊維、原告辻和建設、原告草野を順次訪問し本件投資の勧誘を行った上、原告らいずれに対しても後記(一)のとおりの説明を行った((一)の認定と(二)ないし(四)の認定とは一部重複する点がある。)。また、井上による口頭説明のほか、被告オリックスから原告らに対して交付された資料をも加えた、本件投資のリスクに関する説明内容は後記(五)のとおりである。

(一) 原告らに対する説明内容

証拠(乙七、証人井上雅彦、同池田誠、原告辻和建設代表者、反訴被告丸高繊維代表者、原告草野)によれば、井上が後記(二)ないし(四)の各訪問時に原告らに対して行った説明内容は主として次のようなものであったと認められる。

<1>本件投資は、米国の中古のビルを共同で購入し、賃料収入を得ながら、減価償却を取り込んで税金の繰り延べを図り、更に最終売却時には値上がり益(キャピタル・ゲイン)の取得をも目論むものであること。

<2>投資募集金額は一口二五〇万ドル(一ドル一三〇円として換算すると、三億二五〇〇万円)であって、そのうち七五パーセントにつき被告オリックス及びオリックスUSAのローンがセットされており、右ローンは本件投資の条件となっていること。

<3>オリックスUSAのローンは、投資のために設立する現地の組合へ直接貸し付けられ、右貸付金については投資家が保証すること。

<4>右ローンの金利を損金算入することにより更に節税効果が上がること。

<5>本件オフィスビルは非常に立地が良い上、一フロアーの面積がテナント受けしやすい広さであり、現にテナントとして日系の金融機関や法律事務所等安定的なテナントが入居しており、稼働率が九九パーセントと非常に高いこと。

<6>本件オフィスビルは築年数が古いが、石造りで地震もない上、日本の税法で定められた法定耐用年数四五年を超えていることから減価償却期間が短くなり、また、土地・建物全体の不動産価格に対する建物割合が高いため、節税効果が非常に大きいこと。

<7>米国では収益物件の評価は当該物件が生み出す収益を基準として定まること。

<8>本件オフィスビルの管理・運営はオリックスの関連会社が専門家と一緒になって行うこと。

<9>本件投資による課税所得の減少により自己資金部分相当額程度の金員は約三年で取り戻すことが可能であること。

<10>本件オフィスビルの価額は、一〇年後には約一・六倍になると予想されること。

<11>本件オフィスビルには安定したテナントが入居しているので、賃料収入も安定的に得られると見込まれること。

(二) 反訴被告丸高繊維に対する具体的説明内容

証拠(甲一六ないし一九、乙七、証人井上雅彦、反訴被告丸高繊維代表者)によれば、次の事実が認められる。

(1)  反訴被告丸高繊維代表者は、池田支店長から「いい話しがあるので、伺いたい。」旨の電話を受けた。

(2)  右電話があった数日後、平成元年三月三日、池田支店長は被告オリックスの担当社員井上とともに、反訴被告丸高繊維を訪れた。池田支店長は「社長、税金の節税対策でいい物件があります。」と切り出し、井上は、本件オフィスビルの写真が登載されたカラーパンフレットと「提案書」と題する書面(甲一七)を交付した上、税引後一三パーセントないし一四パーセントの利回りがある旨の説明をした(但し、自己資金部分を元本とした場合の利回りである旨の説明がなされたか否かについては証拠上明らかでない。)。

(3)  また、井上は、本件オフィスビルが一〇年後ドルベースで一・六倍に値上がりしていることを前提にして、採算見込表(「損益‥税務一口分」、「資金収支一口分」)に基づき、税務上の効果及び資金収支(キャッシュ・フロー)上の効果について説明をした。

(4)  反訴被告丸高繊維代表者が、こんな古い建物にそんな値打ちがあるのかという趣旨の質問をしたところ、井上は「米国では建物の価値は建物の収益力で決まる。」「非常に上客が入居している。」「建物の価格の変動は少なく、収益率確実である。」と説明した。

(5)  井上は、雑談も交えながら、一時間くらいかけて右説明をしたが、その際、本件商品につき「申込順であり、早い段階で売り切れる可能性がある。」旨述べた。

(6)  数日後、井上は、反訴被告丸高繊維を訪れ、同代表者に対して、為替リスクについて、更に説明した。

(7)  四月に入ってから、「出資勧誘のための説明書」<乙二>が契約書類とともに送付された。

(三) 原告辻和建設に対する具体的説明内容

証拠(甲二一、 乙七、証人井上雅彦、同池田誠、原告辻和建設代表者)によれば、次の事実が認められる。

(1)  最初、池田支店長から原告辻和建設代表者に電話がかかってきた。

(2)  右電話のあった数日後の平成元年三月三日に、池田支店長が被告オリックスの担当社員二名(うち一名は、井上)を伴い、原告辻和建設の本社の事務所に来た。

(3)  池田支店長は「いい節税商品がある。」と言いながら、井上を紹介して、その後、井上が説明を始めた。井上は、持参した青色のパンフレットとビルを写したカラー写真を見せながら、「何人かで出資をして、ニューヨークのビルを買い、賃料収入を出資者に配分していく。」、「将来はそのビルを売却する。」旨の説明をした。

池田支店長は、右説明に相づちを打ったりした。

(4)  また、池田は、本件オフィスビルが一〇年後ドルベースで一・六倍に値上がりしていることを前提にして、採算見込表(「損益‥税務一口分」、「資金収支一口分」)に基づき、税務上の効果及び資金収支(キャッシュ・フロー)上の効果について説明をした。

(5)  さらに、井上は、利回りは一三パーセントないし一四パーセントである旨の説明をした(但し、自己資金部分を元本とした場合の利回りである旨の説明がなされたか否かについては証拠上明らかでない。)。井上は「米国の不動産は収益で決まる。」、「日本の建物と違って石造りで、古くても価値がある。」、「よそは空室が出てもこの建物は九〇パーセントは埋まっている、最悪でも八〇パーセントを下ることはない。」と述べた。井上の説明によると、利回りのうち七パーセントを被告オリックスが取得し、残りから組合費を支払って、残る分を出資者に渡すということであった。

そして、井上は、被告オリックスから借入れをすることが出資の条件になっている旨の説明をした。

また、池田支店長は、右借入れ以外の分については、被告大阪銀行で用意すると説明したので、原告辻和建設代表者は被告大阪銀行からの借入れも出資の条件になっていると理解した。

(6)  原告辻和建設代表者は、反訴被告高橋に電話をして、本件投資に参加することについての同被告の意見を聞いたところ、同被告は積極的に考えている旨の返答をした。

(7)  その後、一週間のうち一、二回くらい池田支店長と井上が原告辻和建設を訪問して同じような話をした。原告辻和建設代表者は、話を聞くうちに、本件投資をすることを決意した。

(8)  井上の説明時間は一回につき三〇分ないし一時間くらいであったが、井上は原告辻和建設代表者に最初面談した際、本件商品につき「申込順であり、早い段階で売り切れる可能性がある。」旨述べた。

(9)  原告辻和建設代表者は、契約締結を決意した後、本件事業に関する詳しいパンフレットを受領した。

(10) その後、契約書類や極秘と記載された書類(「出資勧誘のための説明書」<乙二>のことであると推認される。)を受領した。

(四) 原告草野に対する具体的説明内容

証拠(甲二〇、乙七、証人井上雅彦、同池田誠、原告草野)によれば、次の事実が認められる。

(1)  平成元年三月始めころ、池田支店長から電話がかかり「いい話がありますよ。」と言われた。そして、数日後、被告オリックスの担当社員(うち一名は井上)が原告草野を訪問した。最初に、池田支店長から右社員を紹介され、節税のためのいい商品がある、詳しくは右社員から説明するということであった。井上から本件投資についての説明がなされ、要は何人かでお金を出しあい、米国のビルを購入し、被告オリックスの方でビルの管理・運用を行い、最終的にはビルを売却するというものであった。その際、原告草野は、ビルの写真と、採算見込表を見せられた。

(2)  また、井上は、本件オフィスビルが一〇年後ドルベースで一・六倍に値上がりしていることを前提にして、採算見込表(「損益‥税務一口分」、「資金収支一口分」)に基づき、税務上の効果及び資金収支(キヤッシュ・フロー)上の効果について説明をした。

(3)  井上は、右表を見せながら、「年同一四パーセントの利回りになる。」、「米国の不動産の価値は収益で決まる。」、「ビルは古いけれど、ビルの価値は賃料で決まるので問題ない。」、「ビルの立地条件も良く、入居者の質も良好で安定している、空室になる心配もない。」、「むしろ、ビルが古いので、税金の繰り延べができる。」、「日本のように極端なインフレはない。」旨の説明をした(但し、自己資金部分を元本とした場合の利回りである旨の説明がなされたか否かについては証拠上明らかでない。)。

(4)  井上は年間一四パーセントの利回りと節税の点を強調した。

(5)  原告草野は、手持資金をもって出資したい旨申し出たが、井上や池田支店長は、被告オリックスや被告大阪銀行からの借入れが出資の条件である旨の説明をした。

井上は、雑談も交えながら、一時間くらいかけて右説明をした。その際、本件商品につき「申込順であり、早い段階で売り切れる可能性がある。」旨述べた。

(五) 原告らに対する、いわゆる投資リスクについての説明内容

(1)  井上は、原告らに対して、本件投資を勧誘するに当たって、為替相場の変動によるリスクがある旨の説明を行った。

(証人井上雅彦、原告辻和建設代表者、反訴被告丸高繊維代表者、原告草野)

(2)  井上は、特に為替リスクを危惧する反訴被告丸高繊維代表者の質問に対しては、為替の変動により円高となった場合の損益分岐点などを説明した。

(甲一八、乙七、証人井上雅彦、反訴被告丸高繊維代表者)

(3)  反訴被告丸高繊維が被告オリックスから受領した「提案書」と題する書面(甲一七)には「6 本投資をされる上での留意点」との項目の下に、「(1) 為替リスク 円投資となりますので為替リスクはありますが、日本における物件の簿価は投資をされる時点での円貨によって決まりますので他の不動産投資に比べ影響は少ないと考えられます。」、「(2) ニューヨークのオフィス需要が急に低下し、期待通りの賃料相場の上昇や優良テナントの開拓が思うように進まない場合もあり得ます。この場合、投資利回りは必然的に悪化します。」「(6) 本投資の仕組みについては、当社にて日米の弁護士、会計士に相談・指導を仰いでおりますが、貴社におかれましても、税務顧問、弁護士等にご相談下さい。」との記載がなされている(証人井上雅彦の証言によれば、原告らに対する勧誘はほぼ同じような態様で行われたものと認められるから、右の説明用資料は原告辻和建設及び原告草野に対しても交付されているものと考えるのが合理的である。)。

(4)  反訴被告丸高繊維及び原告辻和建設に送付された「出資勧誘のための説明書」<乙二>には「投資家の皆様には、パートナーシップに対する出資に関して、次のリスク要因を慎重に検討していただきたいと思います。」と記載した上、「不動産に関するリスク」、「ジェネラル・パートナーに対する依存」、「為替リスク」、「解散のリスク」などの各項目につき具体的に詳細な指摘がなされていた(証人井上雅彦の証言内容からすれば、原告草野に対しても、、右の説明用資料は送付されているものと推認される。)。

4 本件投資申込

証拠(乙七、証人井上雅彦)によれば、次の事実が認められる。

(一) 原告らは、井上の訪問を受け初回の説明を受けた当日、取り敢えず権利を確保するという目的で申込書を書いた。

(二) 原告草野は、個人の節税を図るという観点から、個人として本件投資に参加する旨の意向を示した。

(三) 原告らは、平成元年三月末ころ、被告オリックスに対し、本件投資の申込金五〇万円を支払った。

四  主たる争点1(一)(本件投資の勧誘に際し、被告オリックスの担当社員に説明義務違反があったか否か。)及び争点1(三)(被告大阪銀行ないし同支店長<池田支店長>)に本件投資について説明義務違反ないし助言義務違反があったか否か。)について

1 前記一1認定のとおり、本件投資商品には為替変動による危険性のほかに、不動産市況の低迷により、賃料収入が減少し、組合ローンの返済ができなくなったり、処分時に損失を生ずるおそれがあったものである。

してみると、被告オリックスの担当者には、原告らに対して本件投資を勧誘するに際し、それらの者が有する知識、経験、判断能力等に応じて、右のような危険のあることを説明すべき注意義務を負っていたというべきである。

2 ところで、本件パートナーシップが平成三年二月二七日を最後としてそれ以降原告らに対して収益金の分配を行わなくなった原因について検討しておくこととする。

(一) 原告らが比較的信頼し得るとする、ニューヨーク州鑑定会社作成の一九九三年一月付け不動産鑑定書(乙五)は、ニューヨーク市における賃貸用不動産市況一般について、次のような分析を加えている。

「Wall Street の銀行、投資銀行、金融サービス会杜は1987年の株式市場大暴落の後、直ちにダウンサイジング、レイオフ、閉鎖を始めた。オフィス需要が大きく下降し、オフィス市場は打撃を受けた。その結果、空室率が上昇し、賃料水準が下落した。市場が停滞しているため、テナントはリーズナブルなコストでsecondaryビルからprimaryビルに移転出来るようになった。家主からのフリーレント(賃料無償)と気前のよいテナントインプルーブメント(内装費負担)により、テナントは数年前の何分の一かのコストで新しい別のオフィススペースに移転できるようになった。」、「株式市場暴落の翌年1988年、primary space の空室率は8.1%に下降した。それ以来、空室率は上昇し、1992年第3四半期時点で15.9%である。secondary space の空室率は1987年以降上昇し、現在は23%を超える。前述のとおり、secondary ビルに入居するテナントは数年前支払ったコストの何分の一かでより品質の高いprimary ビルに蔵替えが可能となった。secondary ビルは一般的には戦前築である。通りの形と合わせた結果、これらsecondary ビルの中には余分で非効率なフロアプランを有するものもある。商品取引上、大型のしかも効率的なフロア設計を必要とする金融サービス会社がスペース需要の殆どを生んでいるため、secondary ビルは分が悪い。」、「primary space の募集賃料のピークは1987年で、Sq.Ft.当り$

(二) 本件事業につき、原告らに対する収益の分配がなされなくなった原因は、右分析にみられるような背景事情と無関係ではないと考えられる。そして、本件オフィスビルにつき賃貸活動の低下をもたらした具体的な原因としては新規ないし更新賃料の減額、フリーレント(賃料無償期間)や内装費の賃貸人負担の商慣行の存在など、様々な要因を考え得るところである。

3(一) しかしながら、本件オフィスビルにつき賃貸活動の低下をもたらすに至った直接的原因がいずれの経済的要因であるにせよ、本件投資の勧誘当時、井上が行った採算見込表に基づく説明が単なる蓋然的予測にすぎないことは、いずれも事業家として経済活動について十分な知識、経験及び判断能力を持つと考えられる原告らとしては、十分に知り得ることがらであったというべきである。

(二) 確かに、井上は原告らに対して不動産市況が悪化して賃料収入が減少した場合を想定して説明を行っていないことはその証言内容から明らかであるが、そうであるとしても、不動産市況は元来変動するものであって、かつ、海外投資においては為替変動の一般的リスクが存在するということも当然の前提とした説明と解すべきであって、このような点に鑑みると、井上が原告らに対して断定的判断を示したものであるとはいまだ言い難く、また、井上が原告らに対して殊更に虚偽の説明をしたということも本件証拠上認められない。

(三) なお、前掲「米国不動産小口化投資について」(乙一)に添付された各採算見込表の最下欄には「注 この採算予定表は、現時点で予想しうるプロジェクトの収益、費用と日米の現行の会計税務基準に基づいて算出されたもので確定したものではなく、保証するものではありません。」と記載され、さらに、前掲「出資勧誘のための説明書」(乙二)においては、「見積り」と題する標目の下に「本説明書に添付する見積り(略<当裁判所注>)は、一〇年の期間中のパートナーシップの運営成績の予想に基づき、持分一口の買主に対する税引後の利益を見積ったものです。これは、パートナーシップの将来の運営やパートナーシップへの出資の結果について表明したものではありませんし、保証するものでもありません。」との記載が、また、末尾には「「本物件の運営が成功するか否かについて、パートナーシップがほとんど又はまったく制御できない要因に左右されるため、将来の実際の結果が見積りに合うという保証もありませんし、見積りに明記された内部収益率が達成されるという保証もありません。投資家に対する経済上及び税務上の影響は、本物件の実際の運営成績によって、見積りとは異なってきます。」との記載がそれぞれなされているところでもある。

4 原告らは、市場の欠如、事業の一任性、投資対象が米国の不動産であること、貸付による資金負担、リスクの範囲、利益構造、取引構造の周知性の欠如と難解さという諸点を挙げて、これらを説明義務の根拠としているようでもある。

しかしながら、原告らは、井上の行った口頭説明と契約締結前に受領した説明用資料等の書面(本件投資の性格からして、原告らにおいて自ら慎重を期してこれらの書面を子細に読むことが期待されるのもやむを得ないところである。)をもって、本件投資の基本的仕組み(原告ら投資者の自己資金と原告ら投資者が借り入れた金銭<原告ら投資者が組合ローンにつき出資割合に応じて債務承認するという方法による出資を含む。>により、実質的に本件オフィスビルを購入して共有し、その賃貸収入から損益の配分を受けるとともに、減価償却により課税の繰延べの効果を受け、さらに、将来は、本件オフィスビルを売却して利益を得ることをも期待するということ)や、右の基本的仕組みに付随する一般的リスク等について、認識していたか、少なくとも認識し得たということができる。してみると、井上ら被告オリックス担当社員が、原告らに対して本件投資に係る意思決定をするに当たり正当な認識を形成するに足りる情報を提供すべき注意義務を尽くさなかったということはできない。

5 被告オリックスの担当社員につき説明義務違反の違法性が認められないことは以上のとおりであるから、右説明を同社員に委ねた池田支店長につき説明義務違反ないし助言義務違反があったということもできない。

五  主たる争点1(二)(被告オリックスの担当社員による本件投資の勧誘は社会的相当性を逸脱する違法な行為といえるか否か。)及び争点2(二)(本件債務承認契約、本件各消費貸借契約及び右各契約に関する連帯保証契約は公序良俗違反により無効か否か。)について

1 本件投資においては、被告オリックスから原告辻和建設、同草野及び反訴被告丸高繊維に対して貸付(オリックスローン)がなされているところ、右貸付は投機的取引を助長する弊害があるが、この点をもって私法上も違法であるとは直ちに解することができない。

2 また、本件投資において、リミテッドパートナーシップを構成するという方法が選択されたのは、それが米国における不動産投資のための最も一般的な仕組みであったと解される(弁論の全趣旨)からであり、本件投資の一口の投資額(リスクの範囲)はもともと二五〇万ドル相当の円貨であったのであり、元来投資家は二五〇万ドルの投資リスクを負っていたのであって、組合ローンにつき債務承認するという方法により、被告オリックスの負うべきリスクを投資者に転嫁したものとはいえないから、本件投資の仕組み自体が社会的相当性を逸脱しているものであるとは解することができない。

3 被告オリックスの担当社員につき説明義務違反の違法性が認められないことは前説示のとおりであるし、そのほか、被告オリックスの担当社員による本件投資の勧誘が社会的相当性を逸脱する違法な行為であることを認めるに足りる証拠はない。

六  主たる争点2(一)(本件債務承認契約、本件各消費貸借契約及び右各契約に関する連帯保証契約は錯誤により無効か否か。)について

1 被告オリックスの担当社員が、原告らに対して、本件投資商品につき不動産市況の動向や為替変動などの一般的リスクさえないという趣旨で、安全かつ有利な商品であると言明したとまでは解し得ないことは前説示から明らかであって、原告らは本件投資が節税目的の安全かつ有利な取引であるとの錯誤に陥り、その結果、本件債務承認契約、本件各消費貸借契約及び右両契約に関する連帯保証契約を締結したものである旨の原告らの主張は採用できない。

2 なお、原告らが組合ローンにつき出資割合に応じて債務承認するという方法によって出資することになるという点については十分に理解していなかったということがうかがえないではないが、原告ら投資家が米国の収益ビルを共同購入し、一定の賃料収入を得ながら、減価償却を取り込んで課税所得の軽減(税金の繰延べ)を図り、売却時にはキャピタル・ゲインをも期待するという、本件投資の概要については十分に理解していたと考えられるから、原告らが本件投資の基本的構成要素について前記各契約内容と異なる内心的効果意思を有していたということはできない。

3 よって、原告らの錯誤の主張は採用しない。

七  主たる争点2(三)(本件債務承認契約、本件各消費貸借契約及び右各契約に関する連帯保証契約に基づき請求することは信義則に違反するか否か。)について

本件投資への勧誘行為が違法なものであるとは言えないことは前説示のとおりであるし、以上述べたところによれば、被告オリックスが原告らに対して本件債務承認契約、本件各消費貸借契約及び右各契約に関する連帯保証契約に基づき請求することが右勧誘の経緯あるいは本件投資商品の内容そのものに照らし信義則に反するということもいまだ認めるに足りない。

第四結論

よって、原告辻和建設及び同草野の請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、被告オリックスの反訴請求はいずれも理由があるからこれを認容し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高山浩平 裁判官 小池明善 裁判官 高松みどり)

別紙<省略>

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